日本の口蹄疫消毒薬殺処分 国際獣疫事務局 陸生動物衛生規約 日本語訳
OIE : Terrestrial Animal Health Code
国際獣疫事務局 陸生動物衛生規約 日本語訳
CHAPTER 7.1. (第7.1章)
INTRODUCTION TO THE RECOMMENDATIONS FOR ANIMAL WELFARE
動物福祉のための推奨への導入
Article 7.1.1. (7.1.1条)
動物福祉とは、どのように一匹/頭の動物がその動物が生きている条件に対処しているかを意味する。もし(科学的に証明されるように)その動物 が健康で、機嫌よく、充分に栄養も与えられて、安全な(環境を確保されて)、生まれ持った行動をとる事ができるなら、そしてもしその動物が苦痛、恐怖、疲れなど好ましからざる状態に苦しんでいないなら、動物は福祉の良い状態にいるといえる。良い動物福祉には、病気の予防、獣医による治療、適切な小屋、運営、栄養、人道にかなった取り扱い,無痛屠殺/殺処分が必要になる。動物福祉はその動物の状態に注目させる;一匹の動物が受ける取り扱いは動物養護、畜産学、人道的取り扱いと言った観点から見た取り扱いも含まれる。
CHAPTER 7.6. (第7.6章)
KILLING OF ANIMALS FOR DISEASE CONTROL PURPOSES
防疫目的の動物の殺処分
Article 7.6.1. (7.6.1条)
一般原則
これらの推奨は、動物を殺処分することが決定された場合を前提に、その動物が死にいたるまで動物福祉を確実に行う必要性を述べる。
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動物の人道的殺処分にかかわる人は総て、それに関連した能力と適格性を持つべきである。適格性は公的訓練および、実技経験によって達成されるものである。
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作業の手順は作業が行われる場所の条件に応じて適応されるべきである。動物福祉の観点はさておいても、安楽死の哲学を尊び、安楽死の方法のコスト、オペレーターの安全、バイオセキュリティ、環境上の見地に注意を払われるべきである。
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動物を殺す決定に引き続き、殺処分は出来る限り速やかに行われるべきである。そして動物が死ぬまで通常の家畜飼育法が継続されるべきである。
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動物の取扱いと移動は最小限にすべきであり,行うにあたっては以下の推奨に従って行われるべきである。
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動物の保定は効果的な殺処分を促進するに十分であるべきで、動物福祉とオペレーターの安全を守る必要条件に従って、保定が必要な場合は、殺処分の時間的遅れを最小限に留めなければならない。
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動物が防疫目的で殺処分される場合、用いられる方法は、即死もしくは即時の意識喪失状態のまま死ぬという結果になるべきである。意識喪失が瞬間的に起きない場合、意識喪失への誘導は、嫌悪を起こさせない,あるいは動物の嫌悪が出来る限り最小限に押さえられるものであるべきである。動物に避けられるべき不安、肉体的苦痛、疲労や精神的苦痛をもたらしてはならない。
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動物福祉上の考察からは、若い動物はより年とった動物の前に殺処分されなければならない。バイオセキュリティ上の考察からは、感染した動物が最初に屠殺され,次に接触した動物、最後に残りの動物となるべきである。
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作業が常時、動物福祉,オペレーターの安全性、バイオセキュリティにのっとって実施されているかは、関係当局によって継続的に監視されるべきである。
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作業が終了した時、実際に適応された手順とそれが動物福祉、オペレーターの安全、バイオセキュリティに及ぼした影響を記述したレポートがあるべきである。
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これらの原則は動物がその他の目的,天災の後や動物の数を減らすための殺処分等の目的で殺されなくてはならない時にも適用される。
訳註
バイオセキュリティ(biosecurity) : 農場への病気の侵入を防ぎ、疾病による損失を防ぐ管理法
Article 7.6.5. (7.6.5条) 抜粋
条例7.6.6.-7.6.18.に記載されている殺し方の要約図
方法は動物福祉から勧められる順位ではなく、機械、電気、ガスの順に記されている。
Article 7.6.15. (7.6.15条)
薬殺
1. 序論
多量の麻酔薬と鎮静薬を使用した薬殺は、中枢神経の機能低下,意識喪失に引き続き、 死をもたらす。実際には、その他の薬剤と組み合わせてバルビツレート麻酔薬が一般的に使用される。
2. 効果的に使用するための必要条件
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薬剤の量、どこへ注入するかは、速やかに意識を喪失させ、死に至らしめる事を達成するために決められるべきである。
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動物によっては鎮静薬を先に注入する必要がある。
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静脈注射が適当だか、薬剤に刺激性がない場合には腹腔内または筋肉内への注射が適切である。
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動物は注入が効果的に行われるよう押さえられている事。
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動物は脳幹反射がなくなる事をモニターで確認される事。
3. 長所
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この方法は総ての動物に適応できる。
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この方法による死は安らかである。
4. 短所
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注射する前に動物をしっかり押さえるか、鎮静薬が必要になる事がありうる。
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併用する薬剤の種類、あるいはどこに注入するかによっては動物に苦痛を与える、その場合は意識を喪失した動物だけに使用すべきである。
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法的必要条件、技術習得の規定がある場合は獣医が行う
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病原菌に汚染された死骸は他の野生動物や家畜に伝染する危険性がある。
5. 結論
この方法は少量の牛、羊、山羊、豚、鶏を殺すのに適している。
各国の安楽死方法の規定
日本学術会議 動物実験の適正な実 施に向けたガイドライン 2006年6月1日
第4.2.7)安楽死措置
安楽死措置に使用する薬剤や方法は、動物種及び実験目的に依存して選択する。一般的には科学的方法(過剰量のバルビツール系麻酔薬、非爆発性吸入麻酔薬等の投与、炭酸ガス)あるいは物理的方法(頸椎脱臼、断頭、麻酔下での放血など)によるが、動物福祉の観点からの実験動物に対する安楽死の方法の適否は、国際間で判断が微妙に異なるのて゜動物実験責任者は必要に応じて実験動物の専門家に助言・指導を求めるとよい。
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安楽死処置とは、苦痛を伴うことなく実験動物に速やかな意識消失と死を誘導する行為をいう。「動物の処置方法に関する指針」(平成7年7月4日 総理府告示第40号)に従うほか、国際ガイドラインにも配慮すべきである。
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他の実験動物に苦痛を感じとられないような方法で安楽死処置を実行する。意識消失に至る過程で鳴き声をあげたり、フェロモンを放出したりすることがあるので、このことに十分配慮する。
シカゴ大学の動物実験委員会とAmerican Veterinary Medical Assocuation(AVMA)の安楽死に関する委員会が推奨する方法 2000年版
Euthanasia(安楽死)とはギリシャ語のeu(good、よい)とthanatos(death、死)から由来しており、苦痛なく生を終わらせることである。苦痛のない死の条件とは急速な意識の消失後に心臓の停止、呼吸器の停止を起こすことである。別の条件としては、感情を持っている実験動物を殺すときに、実施者が不快感をもたない方法であり、死後に採取する組織やサンプルに変性がない方法である。
バルビツール酸誘導体
バルビツール酸誘導体としてはペントバルビタール・ナトリウムが安楽死のために最も使われている。バルビツールには中枢神経を抑制する作用があり、意識消失、深麻酔、無呼吸、心臓停止に至る。安楽死のための量は麻酔のために使われる量の少なくとも2倍(120mg/kg)である。濃縮した製品が入手可能で、安楽死のために推奨できる。
不適切な安楽死法の手段
2000 Report of the AVMA Panel on Euthanasia
(米国獣医学会:安楽死に関する研究会報告2000)
京都産業大学総合生命科学部松本研究室 安楽死に適さない注射剤
付表4にあげた注射剤(ストリキニーネ,ニコチン,カフェイン,硫酸マグネシウム,塩化カリウム,洗剤,溶剤,消毒剤と他の毒性や塩,及び全ての神経筋遮断薬)は,安楽死に単独で用いてはならない。