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外来種根絶政策の問題点

 

 

何が起きているか

2010年 記

 

 2004年「外来種対策法」の成立以来、日本の野山・河川には殺戮の嵐が吹き荒れています。タイワンザル・アライグマ・マングース・チョウセンイタチ・ヌートリア・カピバラ・ホテイアオイ・セイタカアワダチソウ・ニジマス・グッピー・オオクチバスなど、過去に海外の生息地から引き離されて日本に連れてこられた動物と子孫、海外原産植物、水生生物等110種以上が日々虐殺されています。

 

 「過去あるいは現在の自然分布域外に導入された種」として定義される外来種は、単に海外からの動植物に留まらず、「世界の外来種ワースト100」にも含まれる家猫・馬・鳩などの飼養者の手を離れた動物や、日本猿・日本イタチ・やぎ・いのししなど国内で移動させられた在来動物、日本猿とタイワンザルとの子孫などの外来動物と国内動物との混血子孫、イノブタなどの国内動物と移動させられた国内動物との混血子孫など、地上に存在するすべての動植物が駆除・殺処分の対象となっています。中でも和歌山県が実施するタイワンザルと日本猿の間に生まれた子供たちを、「遺伝子汚染」として皆殺しにする姿は、この政策の危険な性質をよく物語っています。

 

 1992年発行「生物の多様性に関する条約」第8条hには「生態系、生息地若しくは種を脅かす外来種の導入を防止し又はそのような外来種を制御し若しくは撲滅すること」とはっきりと記されています。

 

 外来種根絶政策は、生態学者によって健全な生態系と認められた動植物以外は皆殺しとする大量殺戮政策です。我が国には「生物の多様性に関する条約」をはじめ、国内法として「 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」「 鳥獣の保護および狩猟の適正化に関する法律」「生物多様性基本法」「 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」などが「外来種殺戮法」として存在しています。この殺戮計画は生物学者・自然保護団体・動物保護団体・環境法律家などによって推し薦められ、すべてのマスメディアの大掛かりな宣伝活動の末、すべての主要政党、大多数の国民の支持を得て行政府が実施しています。

 

 

 小さな命を奪うことに慣れ親しんだ国民は、もはやこのような取るに足らないことに無関心に見えます。しかし外来種根絶政策には、人間が持ちうる最も恥ずべき理念と特性が含まれています。外来種根絶政策には、自然と人間を特定の人々の利己的な理念に従って改変しようとする自然界の改変思想が第一の要素として含まれています。そして、その目的のために障害となる存在を消し去ろうとする排斥思想が第二の要素として含まれています。目的のためには虐殺さえ辞さない残忍な傾向が、この政策の目的と不可分に結びついているのです。

 

 いずれの場合も、理念の正当性は考慮されず、他者への配慮に欠け、罪のない存在を陥れて悪者に仕立て上げ、弱者の声を顧みず、手段を選ばず目的を達成しようとする卑劣な精神によって政策が形作られています。「法律に殺してはいけないと書いてないから殺してもよい」和歌山県担当者のこの言葉は、外来種根絶政策を進める人々の論理と人間性をよく現しています。

 

 この虐殺計画が躊躇なく実行される理由は、対象となる存在が弱く、自分の正当な権利を主張する手段を持たず、武器を持たず抵抗できないことによっています。外来種が及ぼす農林漁業被害問題から発する外来種皆殺し政策は、本来の外来種根絶政策とは同一ではありません。しかし野生生物を皆殺しにしても大地の恵みを独り占めにしようとする利己的な精神が、外来種根絶政策の残忍な手法を容認する原因となっているのです。現在の日本政府は、身寄りを失った動物への保護義務に目を向けることはありません。日々無数のペットが殺処分されています。日本政府は身寄りを失った動物たちを救う人々に援助の手を差し伸べることを頑に拒んでいます。この生命と生命を救う人々をゴミクズ同然と考える軽佻浮薄な姿勢が、今日の外来種根絶政策を招いているのです。

 

 自然保護の名の下で行われるこれらの虐殺は、他の悲惨な人への殺戮行為と同様、美しい言葉で彩られています。「生態系の保全」「生物多様性の保全」「種の保存」「自然との共生」「ワイルドライフマネージメント」「進化を守る」「生命界全体の救済」「宇宙船地球号を守れ」など、これらの言葉は人々を「虐殺の使命感」へと向かわせます。そしてこれらのスローガンは常に、自然保護運動にとって都合の悪い存在を「但し書き」を付けて除外します。これらのスローガンが示す理念は、普遍的な理念、つまり真理を示すことができません。自然保護運動は外来種を生物界から除外し宇宙船地球号から放り出そうとしているのです。しかし賢明な自然は常に、外来種に生態系の一部として生存の場を与えています。

 

 特定の生物カテゴリーである外来種を対象にする根絶政策は、同じ生物である人間に容易に適用できるものです。現在「人間は別」と語る生物学者が「人間も適用するのが普遍的観点である」と正しく語るようになると、この政策は他人事だと考えていた人々の上に悪夢として降り掛かるようになります。すでに目立たない人権侵害の中に、この根絶政策と同様の理念が姿を現しているのを私たちは見ることができます。外来種根絶政策を支持する人々は、血の純血・遺伝子の純血・出生の純血などの古い価値観を現代にもたらし未来を破壊します。

 

 私たちは声を挙げられない存在に代わってこれらの行いをやめさせ、根絶政策が私たちの社会に定着することのないようにしなければなりません。「外来種根絶政策に抗議する日本のNGO」では心ある「新しい未来を作る人々」の声を結集し、社会的弱者・少数者への暴力を止めたいと考えています。

 

外来種根絶政策に抗議する日本のNGO

太郎の友

北海道動物保護協会

 

 

 

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