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日本の口蹄疫消毒薬殺処分

日本の口蹄疫殺処分に用いられた薬剤についての太郎の友の考え方2010

Concept of Taro no Tomo regarding medicine used for slaughter disposition

of foot-and-mouth disease in Japan 2010

日本の口蹄疫殺処分に用いられた薬剤についての太郎の友の考え方2010

 

 日本の口蹄疫殺処分では鎮静剤の筋肉注射の後、消毒薬が静脈に投与されています。日本の動物保護法、国際獣疫事務局の規定では安楽死の要件として痛み・苦しみ・不安を与えず、致死に際してかつ致死に至る過程で意識が喪失(消失)していることが挙げられています。しかしパコマ消毒薬には静脈注射による強い毒性が認められ、溶血作用、神経筋接合部におけるクラーレ様作用、抗コリンエステラーゼ作用が報告されています。(下記「パコマ消毒薬の性質」を参照してください。)従って単体でパコマ消毒薬を用いる場合には「毒薬として苦痛をもたらす致死剤である」ということができます。京都産業大学総合生命科学部松本研究室では安楽死に適さない注射剤として「ストリキニーネ,ニコチン,カフェイン,硫酸マグネシウム,塩化カリウム,洗剤,溶剤,消毒剤と他の毒性や塩,及び全ての神経筋遮断薬は,安楽死に単独で用いてはならない。」と規定しています。

 パコマ消毒薬における神経筋接合部のクラーレ様作用とは、全身骨格筋の抑制作用により目・耳・足指(短筋)→四肢の筋→頚筋→呼吸筋の順に麻痺し窒息死する作用であり、北米の科学者の集まりであるScientists Center for Animal Welfare (SCAW)により苦痛分類のカテゴリーE(麻酔していない意識のある動物を用いて,動物が耐えることのできる最大の痛み,あるいはそれ以上の痛みを与えるような処置)に位置付けられています。SCAWでは「カテゴリーEの実験は,それによって得られる結果が重要なものであっても,決して行ってはならない。」としています。(下記SCAWの苦痛分類を参照してください。)同様に日本の国立大学動物実験施設協議会は「動物実験処置の苦痛分類に関する解説」の中で、筋弛緩薬あるいは麻痺性薬剤,例えばサクシニルコリンあるいはその他のクラーレ様作用を持つ薬剤の使用に関して「全身麻酔などの適切な処置が施されていなければ使用してはならない。筋弛緩薬だけを用いて動物を不動化することは認められない。これらの薬剤が麻酔薬と併用して使用される場合には,麻酔の深度が適切に保たれるように注意しなければならない。」としています。

 またパコマ消毒薬にはトルエン50%溶液が製品中10%〜30%含まれており(訂正 パコマ消毒薬にはトルエンが含まれていないことが判ってきました。2015年要望をご参照ください。)、米国獣医学会:安楽死に関する研究会報告2000では、家庭用薬剤と溶剤の使用を「不適切な安楽死法の手段」と規定しています。(下記の付表4「不適切な安楽死法の手段」を参照してください。)

  

 豚においてパコマ消毒薬静注の前に投与される鎮静剤マフロパン(主成分メシル酸マホプラジン)は闘争防止を目的とした鎮静剤であり、意識消失効果がない薬剤ということができます。牛に用いられる鎮静剤セラクタール(主成分キシラジン塩酸塩)も同様に鎮静目的の筋肉注射では意識消失を得ることはできないということができます。キシラジンは「日本獣医師会 動物の処分方法に関する指針の解説」で「(バルビツール系麻酔薬の)静脈注射が困難な興奮しやすい動物、凶暴な動物では、塩酸キシラジン、塩酸ケタミン等の鎮静剤の前投与を行った上で実施するのが望ましい。」とされる麻酔薬の前処置剤といえます。

 

 以上のことから太郎の友では、動物の殺処分時には麻酔薬によって強い刺激を与えても覚醒せず苦痛を感じない状態ー深い眠りの状態ーに導く必要があると考えています。

 

 

 

Concept of Taro no Tomo regarding medicine used for slaughter disposition of foot-and-mouth disease in Japan 
 

For slaughter disposition of food-and-mouth disease in Japan, disinfectant is administered into a vein after muscular injection of a tranquilizer. Under the Animal Welfare Act in Japan and OIE regulations, euthanasia shall not give any pain, suffering, or concerns, and it is required for the animals to have no consciousness in the process that leads to the death. In the Pakoma disinfectant, however, strong toxicity by intravenous injection has been recognized, and hemolytic action and curariform action and anticholinesterase action in nueromuscular junctions have been reported. (Refer to “Properties of Pakoma disinfectant” below.) Therefore, it can be said that the sole use of Pakoma disinfectant is “a lethal agent that cause pain as a poison,” and the Matsumoto Laboratory of Kyoto Sangyo University, Faculty of Life Science specifies “Strychnine, nicotine, caffeine, magnesium sulfate, potassium chloride, cleaning agents, solvents, disinfectant, and other toxic agents, salts, and other neuromuscular blocking agents shall not be used solely for euthanasia” as prohibition of injections not suitable for use in euthanasia. 
Curariform action in nueromuscular junctions with Pakoma disinfectant is an action to paralyze in the order to eyes, ears, toes/gingers (short muscles), muscles of limbs, neck muscles, and respiratory muscles and lead to death by suffocation by inhibitory actions of the skeletal muscles in the whole body. This is classified as Category E of the pain by the Scientists Center for Animal Welfare (SCAW), which is a group of scientists in North America (treatment that gives the maximum pain tolerated by animals or more pain to conscious animals). SCAW also defines that “experiments classified in Category E shall not be performed regardless of the importance of the results they may lead.” (Refer to the SCAW pain classification below.) Likewise, the Japanese Association of Laboratory Animal Facilities of National University Corporations regulates use of muscle relaxants or paralytic medicines, such as succinylcholine and other medicines with curariform action, in its “Guidelines for pain classification of animal experiments” that “the use is prohibited unless proper handling such as general anesthesia is administered. It is not permissible to immobilize animals only using muscle relaxation agents. If these agents are used with anesthetics, the deepness of the anesthetic state shall be maintained.”  
10 – 30 % of Pakoma disinfectant product is 50% toluene solvent, and according to the American Veterinarian Medical Association Guidelines for the Euthanasia of Animals: 2000 Edition, use of household chemicals and solvents are specified as “improper euthanasia methods.” (Refer to Appendix 4 “Improper euthanasia methods” below.”
In swine, a tranquilizer administered prior to Pakoma disinfectant, MAFROPANE (main composition: mesilate mafoprazine) is a tranquilizer subjected to prevent fights, and can be classified as an agent without effect of putting animals unconscious. It can be also said for the tranquilizer Selactar (main composition: xylazine hydrochloride) that it would not put animals unconscious with muscular injection for the purpose of sedation. Xylazine is a pre-treatment agent to be administered before an anesthetic that is “ideal to be administered after administration of a tranquilizer such as xylazine hydrochloride and ketamine hydrochloride with animals that are easy to be excited and with which intravenous injections (of barbituric anesthetic) are difficult or dangerous animals.
Based on factors above, we consider it necessary for Taro no Tomo to lead to the state in which animals do not wake up and feel pain, that is, in deep sleep, even when strong stimulus is given by the anesthetic for slaughter disposition of the animals.

 

 

パコマ消毒薬の性質

 

 逆性石鹸という言葉は、一般に広く利用されている石鹸との対比から名付けられたもので、通常の石鹸(普通石鹸)が水に溶けると脂肪酸陰イオンになるのに対して、逆性石鹸は水中で陽イオンになる。このため陽性石鹸、陽イオン性界面活性剤とも呼ばれる

 

3.成分・組成

 

・殺菌剤

パコマ(R):[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]-アルキル (C9-15)トルエン(50%溶液)を100ml中20g含有(製品中成分10%) 10)

パコマL(R): [モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]-アルキル(C9-15) トルエン(50%溶液)を100ml中20g含有(製品中成分10%) 10)

パコマ200(R):[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]-アルキル(C9-15) トルエン(50%溶液)を100ml中40g含有(製品中成分20%) 10)

パコマ300(R): [モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]-アルキル(C9-15) トルエン(50%溶液)を100ml中60g含有(製品中成分30%) 11)

 

 

8.毒性

 

界面活性剤一般として

静注による毒性のほうが、経口よりはるかに高い。

界面活性剤の毒性はとくに、局所作用は濃度に依存していて、高濃度では症状は激しいが、低濃度では症状はほとんど見られない。 

従って、毒性値だけでは毒作用の程度は判断できない。毒性値が低くても、 高濃度のものは相当危険と思わなければならない。

 

9.中毒学的薬理作用

 

陽イオン系界面活性剤として

蛋白凝固作用が強い。高濃度では強い腐蝕作用をもつ。

全身作用として、溶血作用、神経筋接合部におけるクラーレ様作用

動物では抗コリンエステラーゼ作用も報告されている

ただし、経口中毒のときこれらの全身作用は普通ではほとんど現れないと考えてよい。

 

 

界面活性剤一般として

主に皮膚や粘膜の刺激作用ないし、腐蝕作用による局所作用が主である。

 

経口の場合

粘膜刺激作用(消化管刺激、腐蝕作用)による嘔吐、下痢、腸管浮腫、消化管出血、麻痺性イレウス、Hypovolemia

血管透過性亢進・細胞膨化による全身浮腫、肺水腫、心機能低下、全末梢血管抵抗の減弱

中枢神経障害

静注の場合

 

溶血作用

作用機序は不明であるが、一般的には、界面活性剤の赤血球膜への吸着により表面張力が低下し、さらに界面活性剤がコレステロールーリン脂質ーリポタンパク質の複合体と結合し細胞膜の変性が起こり、細胞膜の透過性が高まり、次第に細胞膜の崩壊が進む説、赤血球膜からのリン脂質やコレステロールの溶出による膜構造の変化によるという説、赤血球膜タンパク質の変性説、細胞膜を等かして赤血球内に入った界面活性剤 が、糖脂質の一部を細胞膜外に溶出するために起こる説などがある。

マフロパン1%注射液

製剤区分 神経系用薬

 

剤型区分 注射剤  

 

主成分 メシル酸マホプラジン 10mg/1ml 

 

薬効分類 その他の催眠鎮静剤 

 

投与経路 筋肉内注射 

 

対象動物 豚

 

効能効果 豚の鎮静 例えば移動、輸送、群再編成時などの闘争防止

 

用法用量 体重1kg当たり、本剤0.03〜0.05ml(メシル酸マホプラジンとして0.3〜0.5mg/kg)を1回筋肉内に注射する。

 

 

セラクタール2%注射液

製剤区分 神経系用薬

 

剤型区分 注射剤

 

主成分  キシラジン塩酸塩(キシラジンとして2.0g) : 2.332g/100mL 

 

薬効分類 その他の催眠鎮静剤

 

投与経路 筋肉内注射、皮下注射

 

対象動物 牛、犬、猫

 

効能効果 牛:各種検査時、処置時、外科手術時の鎮静、鎮痛、筋弛緩。麻酔時の前処置。

     犬及び猫:各種検査時、処置時、外科手術時の鎮静、鎮痛、筋弛緩。麻酔時の前処置及び麻酔薬との併用

 

用法用量 牛:通常1回量体重100kg当たり本剤として0.25~1.5mL(キシラジンとして0.05~0.3mg/kg)を筋肉内に注射する。追加投与する際でもキシラジンとして総量0.3mg/kgを越えないようにし、注射部位を変えること。標準投与量等はおおむね次の通りである。

 

 

 

■ SCAW苦痛分類のカテゴリーE

 

麻酔していない意識のある動物を用いて,動物が耐えることのできる最大の痛み,あるいはそれ以上の痛みを与えるような処置。

 

Procedures that involve inflicting severe pain near, at, or above the pain tolerance threshold of unanesthetized, conscious animals.

 

手術する際に麻酔薬を使わず,単に動物を動かなくすることを目的として筋弛緩薬あるいは麻痺性薬剤,例えばサクシニルコリンあるいはその他のクラーレ様作用を持つ薬剤を使うこと(解説19)。麻酔していない動物に重度の火傷や外傷をひきおこすこと(解説20)。精神病のような行動をおこさせること(解説21)。家庭用の電子レンジあるいはストリキニーネを用いて殺すこと(解説22)。避けることのできない重度のストレスを与えること。ストレスを与えて殺すこと(解説23)。カテゴリーEの実験は,それによって得られる結果が重要なものであっても,決して行ってはならない。カテゴリーEに属する大部分の処置は,国の方針によって禁止されており,したがって,これを行った場合は,国からの研究費は没収され,そして(または)その研究施設の農務省への登録は取り消されることがある(解説24)。

 

 

 

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